Tonight / トゥナイト

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夢みる没落貴族

全世界を席巻した『Let’s Dance』から14か月でリリースされた『Tonight』は、16枚目のオリジナル・アルバムである。そして、メガヒットスターのタイトル防衛戦ともいうべきこの次回作への評価は、セールス的な手応えとは裏腹に「期待したのが悪かった」といったものだった。
それというのも書き下ろしのオリジナル曲は9曲中たったの2曲で、大半はイギー・ポップとの過去の共作やカヴァー曲となっていることも指摘される。売れた人間への風当たりはきびしい。『Pinups』をリリースしたあの頃とは事情が違ったのだろう。

確かに即席めいたアレンジやパターン化されたサウンド・フォーマットには、贔屓目に見ても辟易させられる。後年ボウイは『Tonight』をして、あの当時は最低な時期だったと回想もしているから、その点はファンも留意しておくべきだろう。
ただ、この80年代音楽の特徴をたっぷり詰め込んだブルーアイドソウルといった観点だと「Loving The Alien」も表題曲でティナ・ターナーと共演の「Tonight」、シングルカットされた「Blue Jean」（ノエビア化粧品CFイメージ・ソング）などもかなりその気にさせてくれる。その他の楽曲もじっくり味わえば、カリブ海を豪華客船でクルーズしているような気分になる。
結論としては、宇宙人キャラクターではあるものの作ったアルバムが常に才能の迸る芸術作品でもいけない、ということだろう。

95年のVirgin再発版CDには、出演映画の主題歌など3曲が収録されているので、これから『Tonight』を聴くファンにはおすすめだが、今では廃盤となり入手しずらいかもしれないし、07年の国産紙ジャケのデジタル・リマスター盤を手に入れてほしい。もちろん聴く順序は『Ziggy Stardust』や『”Heroes”』より後でも構わない。

参加ミュージシャンほか

  Arif Mardin : Strings & Synthesizers Arrange, Conductor
  The Borneo Horns : Horns Arrange
  Carlos Alomar : Guitar
  Carmine Rojas : Bass
  Curtis King : Vocals
  Derek Bramble : Produce, Bass, Guitar, Synthesizer, Backing Vocals
  George Simms : Vocals
  Guy St Onge : Marimba
  Lenny Pickett : Tenor Saxophone, Clarinet
  Mark Pender : Trumpet, Flugelhorn
  Omar Hakim : Drums
  Robin Clark : Vocals
  Sammy Figueroa : Percussion
  Stanley Harrison : Alto Saxophone, Tenor Saxophone
  Steve Elson : Baritone Saxophone
  Bob Ludwig : Mastering
  David Bowie : Produce, Mixing
  Hugh Padgham : Produce, Engineering, Mixing
  Mick Haggerty : Art Direction, Design
  Nickz : Lacquer Cut

レコーディング・スタジオ

  Canada, Quebec, Morin-Heights, Le Studio

各種リリースフォーマット